Food History食材の歴史

魅惑の食べ物 キャビアの歴史

今回はキャビアのお話をお届けです!キャビアと言えば、高級フランス料理店で食べられる超高級食材というイメージがあるかと思いますが、実は昔からキャビアが高級食材として食べられていたわけではありません。かつては、チョウザメの魚肉の方がずっと高価であり、魚卵は家畜の餌や一般大衆の食材として食されていました。

このチョウザメ、実は「古代魚」であり2億年前のジュラ紀初期には生存していたと言われています。余談ですが、生きた化石と言われるシーラカンスは、3億5000年~4億年前前に誕生だとか。チョウザメの多くの種が遡河性で、普段は海に棲むが産卵時に河川に遡上します。その遡上先であり、チョウザメの一大漁場の一つがカスピ海に面するヴォルガ川でした。

チョウザメは古代より食されていました。例えば、エジプト ルクソールにあるハトシェプスト女王の廟からは紀元前1460年頃のチョウザメが刻まれたレリーフが残されていたり、古代ギリシャにおいてはアテナイでアンフォラ(大型の壺)1杯分のチョウザメ肉に羊100頭以上もの高値が付けられたりと、途方もない価値が付けられていたほどでした。
また、イングランド王エドワード2世の治世にはチョウザメを王室の物とする法律が可決されましたが、以後無効にされることがなかったため、2002年にウェールズの海岸に迷い込んだヨーロッパチョウザメが誤って捕獲された際、チョウザメをロンドンの自然史博物館に寄贈するにも搬送するにも王室の許可が必要となったとか…。
 
このように、チョウザメは古代より王や女王、皇帝、ロシアやエジプトの国家君主の所有物として扱われ、また大変貴重な食糧とされてきました。

紀元前4世紀にはアリストテレスがチョウザメの卵についてコメントを残していることから、チョウザメの魚肉ほどではなくとも魚卵も食されていたようですが、1280年になるとロシア正教から節食期間中に食してよい食べ物として公認され、魚肉より魚卵の方が安価だったため、農民たちの食糧として広まっていきました。(ロシア正教では何日にもおよぶ節食期間があり、その期間は肉、魚、卵や乳製品など食せなくなります。)
 
1200年代中頃にチンギス・ハンの孫、バトゥ・ハンにより現在のアストラハンを征服。そして、ヴォルガ川の三角州付近に多く生息していたチョウザメの捕獲システムを作り上げました。1556年にモスクワ大公イワン4世がついにモンゴル人からアストラハンを奪還。同時にチョウザメの漁場の支配権をも取り戻したのです。
ロシアの伝統食品の一つでもあったものが、高級食材へと変貌したのは、女帝エカテリーナ2世(1762ー1796)の統治時代でした。盛大な晩餐会のテーブルの真ん中には、真珠貝と金で作られたスプーンなどと一緒にキャビアが置かれ、たちまちロシア以外のヨーロッパ諸国にも広がっていきます。ちなみに当時はまだバターと同じくらいの価格だったそうで、一般市民も気軽に食べられていたそうですよ。

ヨーロッパでキャビアが受け入れられ、冷蔵を使った輸送手段や鉄道などが開通しインフラも整うと一気にキャビア交易が活発化。アストラハンで製造されるキャビアの25%がヨーロッパに運ばれるようになりました。しかし、ヨーロッパに市場が出来上がることでキャビアの価格は高騰していきます。
 
ロシア最後の皇帝ニコライ2世(1894ー1917)の時代になると、皇帝に献上されるキャビアは11トンにも及んでいたと言います。また、カスピ海でのキャビアの生産量は1860年には4トンだった物が、1900年頃には3000トンとなり、その3000トンのキャビアを生産するために3万3000トンのチョウザメが捕獲されました。しかし、1920年頃にはキャビアの採取量は300トンにまで落ち込み、そこへ追い打ちをかけるようにヴォルガ川のダム建設により、チョウザメが産卵場所を失っただけでなく、水質汚染によりチョウザメそのものにも悪影響を与えました。危機感を覚えたロシア人関係者は、大規模な孵化場を建設。毎年何百万もの稚魚をヴォルガ川に放流することで、1980年にはチョウザメの漁獲高が2万8000トンにまで戻りました。
 
しかし、これで終わることはありませんでした。17世紀以降チョウザメ漁は常に国家の管理下にありましたが、1991年のソビエト連邦の崩壊により管理体制がなくなったことで密漁と闇取引が横行し、チョウザメが一気に減少。こうして絶滅の危機にまで瀕したチョウザメは1997年にワシントン条約にリストアップされ現在では厳格に管理されています。

今では各国でチョウザメの養殖が盛んとなり、市場に出回っているほとんどが養殖のキャビアです。近年、割烹料理店や中国料理店、寿司店でも見かけることは珍しくありません。それだけ身近になったとは言え、やはりまだまだ敷居が高い食材と思っていませんか?人を虜にする魅惑の食べ物キャビア、実はご自宅でもおいしくいただける方法があるので、ぜひ今年のクリスマスやお正月に試してみてはいかがでしょうか?

ゆで卵にキャビを添えるだけ
鯛など白身のカルパッチョに添えて
サーモンやマグロのタルタルに
これから旬の牡蠣に添えて
贅沢の極み!トロxウニxキャビア
必要なのは、盛り付けへのあなたの勇気のみ!究極のTKG

フランス南西部アキテーヌ地方を拠点としてチョウザメを生産しています。フランスの一流ブランド エルメス一族を始め複数の出資者により設立されました。
チョウザメの養殖池では、ストレスのかからないようフランスで定められている半分以下の密度で頭数管理。水は循環ろ過した水を使用することなく、近くを流れるイール川から引き、餌はオーガニックのみを使用。またホルモン剤や抗生物質は使わないなど、決められた基準より更に厳しい独自の基準を設け、その環境下で育ったチョウザメの卵だけを使用しています。

キャビア・ド・ヌーヴィック創業者と養殖池

また、お洒落な店が並ぶパリ、サンジェルマン・デ・プレ地区を始め、フランス国内に3か所のブティックを構えるなど、フランス産キャビアのトップブランドの地位を築きました。まだまだ、海外旅行へ行ける日は遠いですが、もしパリに行かれた際にはぜひ立ち寄ってみてください!

また、国内でもキャビア・ド・ヌーヴィックを取り扱いをしています。気になる方は、ぜひ弊社営業担当までご連絡ください。