Cultureカルチャー

2021年10月22日

バーチャルトリップ vol.8 シエナ

みなさま、こんにちは!

恒例のバーチャルトリップ!今回は中世の街並みが美しい都市「シエナ」へお連れしたいと思います。さて、シエナと言うとキアンティ地区がある県ということから、赤ワインの名産地のイメージが強いと思いますが、実はシエナにはいろいろな側面があるのをご存じでしたか?今日は、それらを少しかいつまんでご紹介したいと思います!では、早速 Si, Parte!!

シエナの歴史

まずは、簡単にシエナのおさらいから。
シエナの起源は、ローマの建国者であり初代王のロムルスの双子の弟レムスの息子により建国されたと言われていますが定かではありません。

シエナが重要な都市として認知されたのは中世になってからといわれています。ローマの聖地巡礼のため、イングランドのカンタベリーからフランス、スイスのアルプス山脈を抜けローマを結ぶ、約2000kmにも及ぶ巡礼路「フランチジェナ街道」がシエナを経由していたという事もあり、ローマへの巡礼者だけでなく多くの商人や騎士たち、また外交のための主要道として利用されていました。この街道が、シエナの町の中心を通っていたことで、銀行業や商業などが大きく繁栄し中世初期にはヨ-ロッパで指折りの商業都市の一つとなりました。ヨーロッパ最古の病院や現存する世界最古の銀行が設立されたのもシエナでした。


シエナ歴史地区の見どころ

カンポ広場

世界一美しい広場と言われている広場。中世の広場としてはヨーロッパでも最大級のひとつである。3つの丘が合流する窪地に作られているため扇のような形状をしており、扇の付け根に向かって傾斜になっています。パリオが開催されるのもこの広場です。

ドゥオモ(大聖堂)

数々の聖人たちの像や絵で装飾されたファサード(大聖堂前面)は、「イタリアで最も美しいファサード」とたたえられている大聖堂です。大聖堂内部も豪華な造りになっていることから、当時のシエナの財政状況がいかに裕福であったことが分かります。
シエナ大聖堂の内部には、なんと図書館があります。「ピッコローミニ家の図書館」は、15世紀末教皇の蔵書を保管するために作られました。その天井は美しいフレスコ画で飾られ、現在は華麗な装飾を施した聖歌本が展示されています。

ここまでは、ガイドブックや様々なサイトに掲載されている定番中の定番スポット。


私が紹介したい場所は、シエナの街を一望できる絶景スポット、「Fortezza Medicea(メディチの要塞)」。その名の通り1561年から1563年にかけて、メディチ家のコジモ1世の命により建てられた砦です。現在では、城壁しか残されていませんが、そこから見るシエナの街を一望できる絶好のロケーションです。


シエナは学生の街?!

シエナの街は観光の街…と思いきや、実は学生の街でもあるのはご存じでしたか?イタリア人の通う大学はもちろん、国立の語学学校「シエナ外国人大学」があり、世界各国からイタリア語を学びに生徒さん達が集まってきます。かという私も約20年前にシエナで1年間過ごし、シエナ外国人大学でイタリア語を勉強した一人。日本を始め、中国、台湾、韓国のアジア圏からはもちろん、北中南米、ヨーロッパ各国、北欧や東欧からも。そしてオセアニア諸国からもイタリア語を学びに来た者があふれているので、シエナの街は意外と国際色にあふれています。生徒の年齢も10代から40~50代までと様々!

国籍も文化も年齢もバラバラな人達が一堂に会しイタリア語を勉強するのですが、小さい町が故にプライベートでも交流が深くなるところが良いところ。
私が暮らしていた大学の寮には、約60名程度(もちろん国籍は様々)入っており、共同キッチンでは毎夜行われる多国籍のおしゃべり大会!時には自国の料理を持ち寄って寮内パーティーをすることも度々ありました。しかし、これが初夏になると共同キッチンからカンポ広場に場所を変え、ビール片手に広場で円陣を組んでおしゃべりするのが毎日の恒例行事。週末には寮の友達やクラスメイトとシエナ周辺の街やフィレンツェなどにも気軽に遊びに行けるので、小さな街でしたが飽きることのない街でもあります。

カリキュラムは3か月コースが主流ですが、現在では1か月のショートコースも設けられているようです。イタリア語を勉強するだけでなく、世界各国の方々との交流の場としてもおすすめですので、ロングバケーションを楽しむ方法の一つかもしれませんね!


シエナ人にとってサッカーより大切?! パリオ

シエナの人々にとって、イタリアの国民的スポーツであるサッカーより重要な祭典がパリオ。パリオとは、毎年7月2日と8月16日に行われる裸馬のレースで、800年以上も続くシエナの伝統的なお祭りです。シエナの旧市街地が17の地区に分かれており、その地区同士の熱い戦いが繰り広げられます。各地区をそれぞれ「コントラーダ」と呼び、コントダーラごとにシンボルとなる旗があります。中には因縁の中というコントラーダもあり、パリオが近づくにつれ、昨日の友は今日の敵と言わんばかりに野次の飛ばし合いも日常茶飯事に!!

コントラーダの旗が街中にはためき初め、あちこちから太鼓を練習する音などが聞こえるようになると、お祭りムードが一気に高まります。祭りの直前には決起集会なる大夕食会も行われ、そしていざ出陣!

コントラーダ事に中世の装いをしたパレードがあり、そしてクライマックスは馬のレース。
騎手は、事前に抽選で割り当てられた鞍のない裸馬の上にまたがり、スタートの合図と同時にカンポ広場を3周(約1km)全速力で駆け巡りますが、騎手が落馬しても馬がゴールすれば優勝。しかも騎手同士の鞭の打ち合いや妨害なんでもありの、ハチャメチャレース。(笑)

とはいえ、歴史あるこのお祭りは見ごたえたっぷりの伝統行事ですので、ぜひ、タイミングを合わせて観戦(?!)をお勧めします。カンポ広場内からの観戦は基本的に無料ですが、まさにすし詰め状態!カンポ広場から観戦する場合には、痴漢やスリも多発しているので、十分気を付けて観戦してくださいね!


シエナの郷土料理

恒例、食の話で締めくくりです!シエナは、キアンティ地区が近いということもあり、やはりお肉料理が美味しい街!シエナを訪れた際には、ぜひこれらのお料理をお試しください!

キアニーナ牛

2000年前から存在する種で、世界一大きいと言われている牛です。調理法は何と言ってもTボーンステーキ!!赤身なのに柔らかくて旨味たっぷりなお肉には、炭火焼が一番!

チンタ・セネーゼ

古代豚の一種で「幻の豚」とも言われる大変貴重な豚。シエナ街中のアリメンターリ(食材屋さん)などに行くと、チンタ・セネーゼの生ハムも購入できます。パルマ産ハムなどと食べ比べしてみてはいかがですか?

ピーチ
ピーチと言っても桃ではありません!(笑)シエナ近郊の極太郷土パスタでモチモチとした食感がまるでうどん。これにイノシシ肉のラグーやきのこ類のソースと合わせるのが定番。

これからの料理に合わせるのは、何と言っても「キアンティ」!!!
しかし、キアンティとひと言で言っても、生産地区によって味わいも様々です。バディア・ア・コルティブオーノのキアンティ・クラッシコは、冷涼なエリアで造られるエレガントなキアンティ・クラッシコです。キレイな酸がお肉の脂味をすぅっと洗い流してくれて、もう一口を誘います。お肉→ワイン→お肉→ワイン→お肉…の幸せなループに導いてくれるワインです。赤系果実とスミレの香りと共に、ハーブも香る繊細な口当たり。昔ながらの陰影のあるキアンティ・クラッシコは、トスカーナの伝統料理にベストマッチです!

余談ですが、小説家の村上春樹さんもこのバディアのキアンティ・クラッシコに魅せられた人のひとり。大ベストセラー「ノルウェイの森」をローマ郊外で執筆中、休暇になると車でキアンティ地区を訪ねたそうです。その時に飲んだキアンティ・クラッシコ・リゼルヴァが大のお気に入りで、彼の短編小説「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」に登場したほどです!

ご自宅でBBQをするにも大変よい季節となりました!今週末は、美味しい赤身肉にキアンティ・クラッシコで幸福のループを楽しんでみてはいかがですか?