Cultureカルチャー
2025年4月25日
BADIA A COLTIBUONO ~トスカーナ州~
今回は「キアンティ・クラッシコ」についてみなさまにご紹介させていただきます。
ワインをあまり飲まない、ワインのことはほとんど分からない、という方も一度は「キアンティ」という単語は耳にしたことがあるのではないでしょうか?実は「キアンティ・クラッシコ」と「キアンティ」は別物であることをご存じですか?その違いについてもご説明いたします。


「キアンティ」も「キアンティ・クラッシコ」も、イタリア中部、ティレニア海側に位置するトスカーナ州で造られる赤ワインです。トスカーナ州は、ワインの生産量でいうとそこまで多くはないのですが、たくさんの高品質ワインが造られるイタリアを代表する銘醸地です。
「キアンティ・クラッシコ」は、世界中からたくさんの人々が訪れる観光地・フィレンツェと、中世の趣が色濃く残る美しい歴史的な町・シエナ、この2つの町の間に広がる美しい丘陵地帯で造られるワインです。このエリアはキアンティ地方と呼ばれており、昔から質の良いワインの生産地として知られていました。
本来はこのキアンティ地方で造られたワインが、キアンティと呼ばれるワインだったのですが、そのあまりの人気の高さに、生産地区がキアンティ地方以外にどんどん拡大して、それらのワインもキアンティと呼ぶようになってしまいました。そこで、本来の産地である元祖キアンティ地方は、自分たちのワインを守るために、その当時すでにあったキアンティDOCGという原産地呼称から独立をして、独自の呼称であるキアンティ・クラッシコDOCGを名乗るようになりました。
キアンティ・クラッシコ地区に含まれる7つの自治体で、厳しい規定をクリアしたワインのみがキアンティ・クラッシコを名乗ることができます。
キアンティ・クラッシコには、黒い雌鶏のマークが付いています。
キアンティ・クラシコのボトルに描かれる「黒い雄鶏(ガッロ・ネーロ)」マークは、トスカーナ地方に伝わる歴史的な伝説に由来しています。
中世、トスカーナ州ではキアンティを挟むフィレンツェとシエナが、キアンティ地方の支配権をめぐって長年争っていました。度重なる戦いを避けるため、両都市はある取り決めを行います。それは、「夜明けに鶏が鳴いたら、各都市から騎士を出発させ、出会った地点を両者の境界とする」というものでした。
フィレンツェ側は、この勝負に勝つために黒い雄鶏を選び、空腹状態にしておくという作戦を立てました。空腹の黒い雄鶏は、夜明けを待たずに真夜中から鳴き始めたため、フィレンツェの騎士は暗いうちに出発できました。一方、シエナ側は健康な白い雄鶏を選び、自然な時間に鳴くのを待ったため、出発が遅れてしまいます。結果、両騎士が出会ったのはシエナのすぐ近くで、フィレンツェがキアンティ地方の大部分を手に入れることとなりました。
この伝説を象徴する黒い雄鶏は、フィレンツェの知恵と勝利のシンボルとして受け継がれました。
1924年、キアンティ・クラシコ協会が発足した際、品質保証のシンボルとしてこの「黒い雄鶏」を公式マークに採用しました。このマークは、「本物のキアンティ・クラシコ」を示す証として、今もボトルに描かれ、世界中で愛されています。


たくさんの生産者がいるキアンティ・クラッシコですが、「バディア・ア・コルティブオーノ」は、キアンティ・クラッシコ地方の生産者の中で、最も古い歴史を持つワイナリーの1つです。ワイナリー名は「豊かな収穫の修道院」という意味であり、1051年にベネディクト派の修道院としてガイオーレ・イン・キアンティに建立されました。この修道士たちが残した12世紀末に書かれた記録文書に、歴史上初めて“CHIANTI”という単語が登場したとされています。。

長い歴史だけではなく、有機栽培への取り組みもバディア・ア・コルティブオーノの哲学の中心にあります。1985年、キアンティ・クラッシコ地方で最初に有機農法への転換を開始し、除草剤や殺虫剤の使用を抑えるなどヘルシーなブドウ栽培を始め、2000年の栽培シーズンから完全にオーガニックに転換しました。ブドウは、自然との調和を大切にしながら栽培されています。省エネルギー機能と太陽光発電を備えたカーボンニュートラルなワイナリーは、持続可能性への強いコミットメントを反映しています。


キアンティ・クラッシコはイタリア全土で栽培されている黒ブドウであるサンジョヴェーゼを主体として造られたワインです。香りが高く、酸味と渋みがしっかりとしています。
バディア・ア・コルティブオーノのキアンティ・クラッシコは、他の生産者と比べて淡い色合いなのが特徴です。アイリスやスミレの花の香りから、時間が経つにつれてタバコ、黒胡椒も香ります。酸味とタンニンのバランスがとても良く、パスタ、米料理、鶏肉・豚肉、牛肉など幅広い料理と合わせて楽しむことが出来ます。


修道院の見学や併設されたレストランでのお食事はもちろんのこと、お料理教室も行われており、ワインだけでなく総合的なアグリツーリズモを体験することができます。
レストランやショップで「キアンティ」や「キアンティ・クラッシコ」という言葉を見かけたら、黒い雄鶏を探してみてください!そして機会があれば、キアンティ・クラッシコ地方やバディア・ア・コルティブオーノに訪れてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2025年4月に執筆されたものです。