Cultureカルチャー
2026年2月9日
MASI ~ヴェネト州~
イタリアが誇る偉大な赤ワインの一つにアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ (Amarone della Valpolicella)という銘柄があります。直訳すると「ヴァルポリチェッラのアマローネ」。その名の通り、このワインはヴェネツィアを有する北イタリアのヴェネト州、ヴァルポリチェッラという地域で造られています。中世の街並みが残る美しい都市・ヴェローナから、車で北に30分ほど行った場所に位置しています。



アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(以下、アマローネ)は、伝統に則ったクラシックな造りのもの、より濃く・より分かりやすい味わいのものまで様々なスタイルがありますが、すべてに共通しているのは、ブドウを陰干しして造られるということ。陰干しの技法は「アパッシメント」と呼ばれます。冬の間にアパッシメントが行われることでブドウの水分が飛び、それにより出来上がるワインは色、香り、渋みが凝縮された、複雑みを帯びた味わいとなります。
そんなアマローネ、現在では高品質赤ワインとしての知名度を確かなものとしましたが、1980年代までは地元消費が中心のワインで、国際的な評価がほぼないワインでした。
そんなワインを世界進出させた立役者が、Masi(マァジ)社。そして、同社現CEOのサンドロ・ボスカイーニ氏です。
2000-2010年代、アマローネの真の価値を伝えるべく、サンドロ氏は教育型プロモーション、ソムリエ向けセミナーなど、イタリア国内外で様々な活動を行いました。現在のアマローネのブランド力、国際的な評価や認知度、そしてマァジ社の確固たる立ち位置は、彼の活動が大いに影響しています。このことから、サンドロ氏は業界では”Mr. Amarone”と呼ばれています。
そんなサンドロ氏率いるボスカイーニ家が運営をする1772年創業のマァジ社。250年以上の歴史をもつ老舗ワイナリーには、世界中からたくさんの人々が訪れます。ここでは、そんなマァジ社のセラーや今年新しくオープンした複合施設「Monteleone21」など、普段はなかなか見る機会のない内部の様子をご紹介いたします。
マァジは社内に「マァジ・テクニカルグループ」というチームがあります。栽培、醸造、マーケティングの専門家からなるこのチームは、ブドウ栽培やワイン醸造についての研究を行っています。こちらの樽も、研究用に導入されたもので、近い未来にここから新しいワインが生まれるかもしれません。


こちらはアパッシメントが行われている部屋。スノコのような棚は、アレーレと呼ばれています。なんと今年はアパッシメントに最適な天気が続いたということで、通常よりかなり早い時期にアパッシメントが終了。逆に貴重なアパッシメント後のお掃除作業を拝見することができました。


土壌の違いが分かるディスプレイ。色や細かさがそれぞれ違うのが確認できます。この違いが、ワインの個性となって表れます。このように展示されることで、言葉で聞くよりも分かりやすく違いを認識することが出来ますよね。まさに百聞は一見に如かず。
熟成庫には、奥の方まで樽が並んでいます。ワインのスタイルによって樽の大きさや種類、熟成される期間が異なるため、様々な種類のものが使用されています。


たくさんのバックヴィンテージが隙間なく並んでいるセラーは圧巻です。
この地域の郷土料理にはお米を使ったものが多く、ガッティナーラのネッビオーロは、その繊細さと自然なエレガンスによって、この土地ならではの多彩な郷土料理と驚くほどよく調和します。 代表的な料理としては、次のようなものがあります。
本社から歩いて10分ほどの所にはセレーゴ・アリギエーリの畑があります。
セレーゴ・アリギエーリは、「神曲」を書いたダンテ・アリギエーリの子孫であるセレーゴ・アリギエーリ伯爵家が所有するワイナリーです。業務提携により、ブドウの栽培から販売までマァジ社が行っています。

冬だったのでブドウの収穫は終了していますが、かわいらしいバラのお花が咲いています。これには実務的な意味があります。バラは、うどんこ病(植物によく見られるカビによる病気)などの病害にブドウよりも早く反応します。バラが先に病気になることで、「近いうちにブドウも危ない」という早期警告の役割を果たし、対策を講じて、被害を最小限に抑えることができます。

セレーゴ・アリギエーリからリリースされているアマローネは“ヴァイオ・アルマロン”という名前がついています。これは、このワインに使われるブドウ畑の名前。マァジ社から出している”コスタセラ”アマローネとの大きな違いは、熟成に使われる樽で、ヴァイオ・アルマロンには桜の木の樽が使われています。
そんな樽が置かれている熟成庫に広がる香りは、唯一無二。これまで嗅いだことのない、筆舌に尽くしがたい芳醇な香りが部屋いっぱいに広がっています。アマローネというワインの真価を教えてもらうような稀有な体験です。
そして、今年2025年、満を持してオープンした“Monteleone21”は、本社社屋の通りを挟んだ向かい側にある巨大複合施設です。館内にはワインショップ、ワインバー、レストランが入っており、訪問時はアーティストによるインスタレーションもありました。




ホールやミーティングルームも併設されていて、とても広い施設です。今後、どのような進化を遂げていくのかも楽しみですね。
ここでしか買えないアイテムなども置いているので、ワインラバーは、ワイナリーツアー、ランチ、ショップでお買い物、ブドウ畑の広がる周辺をお散歩、こんなコースで一日中楽しめてしまいますね。機会があれば是非ヴァルポリチェッラやマァジ社を訪れてみてください。いつもと違う経験ができるワインツーリズムは、いつもとは違う旅行のスタイルとしてとてもおすすめです。
2025年も残りわずか。本年もイタリアの最新情報をお届けしてまいりましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。みなさま、よいお年をお迎えください。
※本記事は2025年12月に作成されたものです。