Cultureカルチャー
2026年4月9日
【JET CUP】チャンピオンツアー Vol.10
第16回 チャンピオン 山田 琢馬氏
イタリア研修 最終日 Travaglini 訪問

イタリア研修 最終日 Travaglini訪問
イタリア研修最後の訪問地は、ガッティナーラにあるTravaglini。アルバから約2時間、ノヴァーラ駅に到着すると、洗練されたアルバの街並みとは異なり、どこか古き良きイタリアの風景が残る落ち着いた街並みが広がっていた。ワイナリー到着前、現当主であるチンチア氏とレストランで昼食をともにした。
TRAVAGLINI(トラヴァリー二)
トラヴァリーニ社は、1920年にクレメンテ・トラヴァリーニが設立して以来、4代にわたってワイン造りの情熱を伝えてきたワイナリーです。ワイナリーの位置するピエモンテ州ガッティナーラ地区は約1億5千万年前の氷堆積土壌で、花崗岩、斑岩、石英、長石、鉄などの鉱物質に富んでいます。カルシウムやマグネシウムが多く、石灰岩が含まれていないため酸化反応が起こりやすいというイタリア国内外でもまれな土壌が、ワインの豊かなアロマとバランスを造り出します。

この日合わせたのは、彼らが手がけるネッビオーロのスパークリングワインNeboléと、彼女自身の名を冠したキュヴェCinzia。旬のキノコをふんだんに使ったパスタとともに楽しんだ。どちらのワインも伝統産地に根差しながら、非常にユニークな発想から生まれている。
Neboléは、ブドウ樹についたネッビオーロの房の先端部分が最も酸が高くなる箇所のみを切り落として造られるノン・ドサージュのスパークリングワイン。ワインコンサルタントの提案から始まったプロジェクトだが、この取り組みにより、残されたブドウはより高い成熟度、収穫で きるようになり、結果としてスティルワインの品質向上にもつながったという。

一方、Cinziaは彼女自身が生み出したワインで、ネッビオーロの持つ厳格さを、ボナルダとヴェスポリーナをブレンドすることで和らげ、よりしなやかな味わいに仕上げている。

ワイナリーでは、醸造設備と畑を見学した。醸造所はちょうどプレスを終えた直後で、清潔感とともに収穫期ならではの活気に満ちていた。発酵は主にステンレスタンクで行われ、熟成には伝統的な大樽に加え、一部バリックも使用。さらに近年は、試験的にコンクリートタンクの導入も始めているという。

丘の上に広がる畑にも案内してもらった。山道を登った標高約400mの畑は、モンテ・ローザから吹き下ろす風の影響で、冷涼かつドライな気候にある。土壌はバローロやバルバレスコとは異 なり、火山性の花崗岩を含むのが特徴だ。実際に畑に立つと、絶え間なく吹く風を肌で感じることができ(正直かなり寒かった)、この環境がワインにエレガンスと華やかなニュアンスを与えるという説明にも深く納得した。

テイスティングでは、チンチア氏の解説を聞きながら数種類のワインを試飲。

どのワインにも共通して感じられたのは、エレガンスとしなやかさ。Travagliniのスタイルを明確に理解することができた。特に印象に残ったのはGattinara Riserva 2020とIl Sognoだ。

リゼルヴァといえば、長期熟成を前提としたスケールの大きさが先行し、「今飲むには早い」と感じることも多い。しかしTravagliniのRiservaは、すでにしなやかな質感と見事なバランスを備え、熟成由来のフレーバーの層が口中に美しく広がっていた。
Il Sognoは、彼女の父親が最後に手がけたプロジェクト、1950年に先代からワイナリーを引き継いだ彼女の父親は、それまでの大量生産型スタイルから、テロワールと品質を重視する方向へと舵を切った人物だ。その功績により、Gattinaraという産地が広く認識されるようになったと言っても過言ではないだろう。
Il Sognoはイタリア語で「夢」を意味する。2000年代初頭、彼女の父親がヴァルテッリーナを訪れた際に出会ったスフォルツァートから着想を得て生まれたワインだ。ピエモンテでは珍しい、約100日間に及ぶアパッシメントによって造られ、Gattinaraの持つデリケートなボディを補完し、風味と味わいに奥行きとコクを与えている。
そのユニークさと完成度の高さに強く心を打たれ、帰国後すぐに購入したほどだった。訪問を通じて、チンチア氏の父親への深い敬愛が随所に感じられた。彼ら家族が紡いできたストーリーとともに、Travagliniのワインをぜひ日本のお客様に伝えていきたい…そう強く思わせてくれる、印象深い訪問となった。

2週間のイタリア研修旅行。
出発前は程よい不安と緊張がありましたが、終わってみれば本当にあっという間で、素晴らしい出会いと多くの学びに恵まれた時間でした。他の伝統国と比べても、イタリアは歴史、気候、地域性、そして土着品種の多様さが重なり合い、同じ伝統産地でありながらまったく異なる個性を持つ国です。ワインを学ぶ身として、その奥深さゆえの“掴みづらさ”を感じていました。
今回の旅では、南から北まで自分の足で移動し、それぞれの土地のユニークさに直接触れることができました。その経験を通じて、イタリアというワイン生産国との距離感を一気に縮めることができたと確信しています。
また、伝統を大切にしながらも、時代の流れや環境の変化、そして消費者の嗜好に向き合い、柔軟にブドウ栽培やワイン造りを進化させている姿を、各地で目の当たりにしました。その姿勢には大きな驚きと敬意を抱きました。
この経験を、職場に足を運んでくださるお客様一人ひとりにお伝えしていくことこそが、私にできる何よりの恩返しだと思っています。このような素晴らしい機会をいただき、本当にありがとうございました。
