Cultureカルチャー

2026年4月24日

北ピエモンテのテロワールを伝える旅:火山性土壌が育むネッビオーロを日本のワイン愛好家の皆様へ

イタリアと聞いて、みなさんはどんな風景を思い浮かべるでしょうか。
太陽が降り注ぐ南イタリアの海や、ローマの歴史的な街並みを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、今回ご紹介するのは、イタリア北部に位置する「ピエモンテ州」です 。イタリア語で「山の麓」を意味するこの地域は、その名の通り、雄大なアルプス山脈のふもとに広がる、自然豊かで静かな土地です。
まだ冬の冷たい空気が心地よく感じられる3月初旬、この美しい土地から特別なゲストが日本へやってきました。
ガッティナーラの歴史と名声を世界に広めてきたワイナリー「トラヴァリーニ」の5代目であり、エクスポートマネージャーを務めるアレッシア・コッラウト・トラヴァリーニ氏が、自社ワインのプロモーションのために来日しました。
数日間にわたる今回の滞在では、ワインセミナーやテイスティングイベント、ディナーなどが開催され、多くのワイン関係者や愛好家が集まりました

▲ 5代目のアレッシア・コッラウト・トラヴァリーニ氏

トラヴァリーニ社にとって、日本はイタリア国外における最も重要な市場のひとつであり、同社のワインは日本で20年以上にわたり親しまれています。
アレッシア氏は今回の来日でトラヴァリーニのワインを愛するお客様や多くのワイン愛好家と直接交流する機会にも恵まれました。生産者自身の言葉でワインそのものだけでなく、一杯のグラスの向こうにある物語や造り手の情熱を伝えることができ、その想いは出会った人々の心に深く刻まれたことでしょう。

大地の秘密:7000万年前の巨大火山とアルプスの風

彼らが造るワインの故郷は、ピエモンテ州にある「ガッティナーラ」という非常に小さな村です。ここでは「ネッビオーロ」と呼ばれる、イタリアを代表する気品あふれるエレガントな赤ワイン用ブドウが育てられています。
ガッティナーラの土地を唯一無二のものにしている理由は、約7000万年前、この地域が巨大な火山の火口(カルデラ)だったことにあります。
昔、ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸がぶつかり合ってアルプス山脈が形成されたとき、この巨大火山は自らの重みで崩壊し、地中深くにあった古代の岩石が地表に押し上げられました 。そのため、トラヴァリーニ家のブドウ畑には、火山由来のごつごつとした石が数多く見られます。さらに、畑からわずか30キロメートルの場所には、ヨーロッパで2番目に高い「モンテ・ローザ」という雪山の頂がそびえています。そこから冷たくさわやかな風が、常に畑へと吹き下ろします。
この土地こそが、ガッティナーラという唯一無二のワインを生み出しているのです。

▲ トラヴァリーニ畑の景色とアルプス

この古代の火山性土壌とアルプスから吹き下ろす風が相まって、ブドウはゆっくりと時間をかけて成熟します。
その結果、ワインにはいきいきとした酸味と、ソムリエたちが「ミネラル感」と呼ぶ独特の奥行きのある味わいが生まれます。

▲ネッビオーロのブドウ(ピエモンテ地方では「スパンナ(Spanna)」と呼ばれる品種
▲リゾット・アル・ガッティナーラ

ワインと美食が出会うとき

ワインを語るうえで、料理とのペアリングは欠かせません。ピエモンテ州は、イタリアの中でも特に美食の地域として知られています。特にガッティナーラ周辺は、イタリア有数の稲作地帯に近いため、日本人の味覚にも親しみやすいお米料理が多く見られます。
その代表的な一皿が「リゾット・アル・ガッティナーラ」です。地元のガッティナーラの赤ワインを贅沢に使い、ゴルゴンゾーラチーズを溶かし込んだ、濃厚でコクのある味わいが特徴です。

また、特別な日の食事には、卵をたっぷり使ったピエモンテ名物の細いパスタ「タヤリン」もおすすめの一皿です。コクのある肉のラグーソースや、香り高いトリュフと合わせることで、その魅力がいっそう引き立ちます。
ワインをひと口、そして料理をひと口。それだけで、まるでイタリアの温かく豊かな食卓に招かれたような気分を味わえるでしょう。
そんなトラヴァリーニのワインは、その味わいだけでなく、印象的なボトルの形でも知られています。

▲黒トリュフのタヤリン

トラヴァリーニを象徴する、芸術的なボトル


トラヴァリーニのワインを目にしたとき、誰もが驚くのがそのユニークなボトルの形です。1958年に考案されたこの形は、単なる美しいデザインではありません。長く熟成されたワインの澱を、グラスに注ぐ際にボトル内に自然に留め、デキャンタージュをせずにそのまま美味しく注げるように計算し尽くされた、機能的かつ芸術的な形なのです。

▲ トラヴァリーニの特徴的なボトル

ワイナリー初の挑戦となる特別なワイン「ヴィーニャ・ロンキ」

今回の来日で、アレッシア・トラヴァリーニ氏が日本のワイン愛好家に初めてお披露目したのが、「ヴィーニャ・ロンキ」という特別なワインです。
これまでトラヴァリーニ家は、複数の畑でとれたブドウでワインを造ってきました 。しかし今回、ワイナリーの長い歴史の中で初めて、単一畑で収穫されたブドウだけでワインを造るという新しい挑戦に取り組みました。「ロンキ」という名前のこの畑は、ガッティナーラの村で最も標高の高い場所にあり、日当たりも風通しも抜群です。
この畑には1969年に植えられた樹齢約60年の古木があり、そこから収穫される極上のブドウだけを使用しています。
収穫されたブドウは、丁寧に仕込まれた後、大きな木製の樽などで約4年間、さらに瓶内で1年間、合計5年以上の長い時間をかけてゆっくりと熟成されます。
力強い香りを持ち、ガッティナーラの土壌に由来する特徴的なミネラル感が際立つワインです。ワインに詳しくない方でも、そのエレガンスと奥深い味わいにきっと魅了されるはずです。

▲ガッティナーラ・リゼルヴァ「ヴィーニャ・ロンキ」

※本記事は2026年3月に作成されたものです。