Cultureカルチャー

2026年3月30日

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック開幕!イタリアを象徴する「アンバサダーワイン」に選出された、マルケ州の至宝「ヴィッラ・ブッチ」の物語

いよいよ、世界が待ちわびた「ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック」が華やかに開幕しました。イタリアでの冬季五輪開催は2006年のトリノ大会以来、20年ぶりのこと。ファッションと経済の都「ミラノ」と、ドロミテの真珠と称される美しいリゾート地「コルティナ・ダンペッツォ」を中心に、イタリア全土がスポーツの情熱と歓喜に包まれています。
今回の大会において、イタリア・オリンピック委員会(CONI)は、スポーツの祭典を支えるホスピタリティの一環として、イタリアの「食文化」の粋を尽くしたプロジェクトを始動させました。その象徴的な試みが、イタリア文化の真髄を世界へ伝える「アンバサダーワイン」の選出です。

【イタリアを代表する26の「アンバサダーワイン」への選出】


このアンバサダーワインが振る舞われるのは、大会期間中に設置されるイタリア選手団の公式ホスピタリティ施設「Casa Italia(カーザ・イタリア)」です。
「カーザ・イタリア」は、ミラノ、コルティナ、そしてリヴィーニョという3つの公式会場に設置され、競技に挑むアスリートたちはもちろん、スポーツ団体、国際代表団、さらには各国のメディア関係者が集う交流の拠点となります。
CONIは、この「カーザ・イタリア」を訪れる関係者に、イタリアが世界に誇る「Made in Italy」の品質と多様性を体験してもらうべく、国内の数あるワイナリーの中から26銘柄をアンバサダーとして厳選しました。イタリア全土のテロワール(風土)を網羅し、その土地の歴史や哲学を体現する銘柄が、イタリアのホスピタリティを象徴するワインとして提供されます。

この度、たいへん光栄なことに、私たちが日本国内で大切にご紹介してきたラインナップの中から、5つのアイテムがこの「アンバサダーワイン」に選出されました。
選出された5つのワインは、それぞれがイタリアの多様なテロワールを代表するものばかりですが、本日はその中でも、イタリア白ワインの歴史を塗り替え、今や「伝説」とも称されるマルケ州の名門、「ヴィッラ・ブッチ(Villa Bucci)」について詳しくご紹介いたします。

ヴィッラ・ブッチ:ヴェルディッキオの価値を変えた「白ワインの王」

イタリア東部、アドリア海を望むマルケ州。そのなだらかな丘陵地帯が続く「カステッリ・ディ・イエージ」の地に、ヴィッラ・ブッチは居を構えます。
ブッチ家は1700年代からこの地で農業を営んできた名家ですが、現在のワイナリーの名声を不動のものにしたのは、創業者、アンペリオ・ブッチ氏の情熱と哲学に他なりません。かつて、この地域の主要品種である「ヴェルディッキオ」は、魚の形をしたボトルに入れられ、手軽に楽しめる早飲み用のデイリーワインとして知られていました。

▲ アンペリオ・ブッチ氏

しかし、アンペリオ氏はヴェルディッキオというブドウが持つ「真のポテンシャル」を信じて疑いませんでした。「ヴェルディッキオは、熟成によって偉大な複雑味を帯びる、世界でも稀有な白ブドウである」――。そこでアンペリオ氏は、偉大なワインを造る秘訣を学ぶためブルゴーニュに赴きました。ブルゴーニュの生産者はその秘訣を明かすことはありませんでしたが、アンペリオ氏はひとつの共通点に着目しました。それは、土壌です。有名なドメーヌの畑には必ず粘土と石灰質土壌が存在していたことに着目し、自身の所有地の中で、粘土と石灰が層になっている土壌を探し、その土壌が存在する場所だけにブドウを植樹しました。ヴェルディッキオの畑は現在全部で5つ。各々標高や方角、ブドウの樹の樹齢が異なります。ヴィッラ・ブッチでは、畑ごとに醸造・熟成し、瓶詰め直前にブレンドをしていますが、これがまさに「ブッチ・スタイル」。ヴィッラ・ブッチのヴェルディッキオが他と一線を画す品質である由縁です。さらに、ヴィッラ・ブッチでは、DOCの規定を超える厳しい自社基準を設け、圧倒的なクオリティのワインを世に送り出しています。

伝統を重んじる哲学:大樽熟成とオーガニックへのこだわり

ヴィッラ・ブッチのワイン造りを語る上で欠かせないのが、その徹底した「伝統への敬意」です。
現在、多くの白ワインがフレッシュさを保つためにステンレスタンクで醸造・熟成される中、ヴィッラ・ブッチでは伝統的な「大樽(スラヴォニアン・オーク)」を使用しています。それも、単なる樽ではなく、80年以上も使い込まれた巨大な古樽です。 この大樽による熟成は、ワインに過度な樽の香りを付けるためではなく、ワインをゆっくりと呼吸させ、ブドウ本来の力強い構造と複雑味を引き出すために行われます。

▲ ヴィッラ・ブッチ社の巨大な古樽

また、畑では1980年代から一貫してオーガニック栽培を実践。樹齢の高い古樹を大切に育て、その根が地中深くから吸い上げたミネラルを余すことなくボトルに封じ込めています。「良いワインは醸造所ではなく、畑で造られる」という彼らの姿勢が、一口飲めば伝わる純粋さと深みを生み出しているのです。

▲“ブッチ”ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イェージ

“ブッチ” ヴェルディッキオ・クラッシコ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ:その至高の味わい

今回、ミラノ・コルティナ2026のアンバサダーとして、そして世界各国のゲストを魅了する一本として選ばれたのが、この「“ブッチ” ヴェルディッキオ・クラッシコ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ」です。

このワインは、ヴィッラ・ブッチが所有する最良の畑から厳選されたヴェルディッキオのみを使用しています。グラスに注ぐと、輝きのある美しい黄金色が目を引きます。

香りは驚くほど多層的です。フレッシュなリンゴや洋ナシ、白い花のニュアンスから始まり、グラスの中で温度が上がるにつれて、ハチミツ、アーモンド、そしてこの地特有の石灰質土壌に由来する火打石のようなミネラル香が立ち上ります。

口に含むと、まず感じるのは圧倒的なバランスの良さです。豊かな果実味と、背筋が伸びるような美しい酸、そして後半に広がる塩気を含んだミネラル感が、重層的なハーモニーを奏でます。特にフィニッシュに感じられる心地よいアーモンドの苦味は、最高級のヴェルディッキオだけが持つ高貴な証です。

このワインの驚くべき点は、その「生命力」にあります。通常、白ワインはリリースから数年で飲み頃を迎えますが、ヴィッラ・ブッチのワインは、5年、10年と経つごとに、まるでブルゴーニュの偉大な白ワインのように、より豊潤で深みのある姿へと変貌を遂げます。

ワタリアのホスピタリティを象徴する一本として

「“ブッチ” ヴェルディッキオ」は、その洗練された味わいから、料理との相性も抜群です。 アドリア海の新鮮な魚介類を使った前菜やパスタはもちろん、鶏肉や豚肉などの白身肉の料理、また熟成したチーズとも見事なペアリングを見せます。ここで、コルティナ・ダンペッツォ会場のある、アンペッツォ地方の郷土料理である「カスンツェイ」をご紹介。カスンツェイは、アンペッツォ地方の伝統的なラビオリで、赤ビーツやジャガイモ、リコッタなどを詰めた半月形のパスタです。茹でた後、溶かしバターとケシの実、パルミジャーノをかけて仕上げます。ビーツ由来のほのかな甘味と土のニュアンス、バターのコクが調和した、山岳地帯らしい素朴で滋味深い郷土料理です。
そんな山の郷土料理にもブッチ・ヴェルディッキオは寄り添います。カスンツェイのビーツの甘味とバターのコクに対し、ヴェルディッキオの伸びやかな酸とアーモンドを思わせる余韻が見事に調和します。ワインの持つ旨味とミネラルが料理の繊細な風味を引き立てる、理想的なペアリングです。

▲ カスンツェイ

ミラノ・コルティナ2026という、イタリアの誇りをかけた大舞台。 そこで世界中の人々を迎え入れるための1本として、ヴィッラ・ブッチが選ばれたのは、必然であったと言えるかもしれません。彼らのワインには、イタリアが大切にしてきた伝統、土地への愛、そして未来へ向かう情熱のすべてが詰まっているからです。

この記念すべき大会とともに、イタリアの至宝「ヴィッラ・ブッチ」が奏でる感動を、ぜひ日本の皆様にも分かち合っていただければ幸いです。

※本記事は2026年2月に作成されたものです。