Cultureカルチャー

2023年2月24日

愛のワイン

1年で一番寒い月と言われる2月ですが、2月の一大イベント、ヴァレンタインデーにちなんで、今日はちょっと心が温かくなるような「愛のワイン」についてご紹介いたします。

その前に、イタリアにおけるヴァレンタインデーについてちょっとお話しましょう。

日本のヴァレンタインデーが結構独特なのは、皆さんご存じかと思います。恋する女子たちが好きな男性にチョコレートと共に愛の告白する日だったり、本命チョコがあったり、義理チョコがあったり、配る専用のバラマキチョコなんていうのがあったり、自分用のご褒美チョコがあったり、毎年この時期のチョコレート商戦はすさまじいですよね!そして、ホワイトデーというユニークな日があるのも特徴かと思います。

一方、イタリアはと言いますと、この日は「San Valentino(サン・ヴァレンティーノの日)」、または「Festa degli innamorati(フェスタ・デッリ・インナモラーティ 恋人たちのお祝いの日」と言います。もともとキリスト教に由来する日ですが、イタリアでは恋人同士が一緒にステキな時間を過ごしながらお祝いする愛の日です。

イタリアでは、主に男性が愛する恋人や伴侶にプレゼントを贈ったりしますが、真っ赤なバラが店頭から消えるほど売れまくり、またレストランの予約が一年で最も取りにくい日の一つでもあります。日本ではクリスマスディナーがカップルで賑わいますが、イタリアではクリスマスは家族と過ごすため、恋人とのディナーのピークは、このサン・ヴァレンティーノの日なのです!人気の贈り物は、やっぱりお花、アクセサリー、香水、ランジェリー等で、最近はカップルで施術を受けられるカップル・スパへの小旅行も人気だそうです。街のお店のディスプレイもロマンティックな雰囲気で、この時期のイタリアを散歩するのも、なかなか楽しいと思います。

さて、話を「愛のワイン」に戻しましょう。

この世には数えきれないほどのワインが存在し、その1本1本に様々なストーリーがあるわけですが、やはり、愛する恋人や伴侶のために造られたワインが存在します。

カステッロ・ディ・ネイヴェ社のお城。息をのむほどに美しい!

例えば、イタリアが世界に誇る偉大なるワイン“バルバレスコ DOCG”の素晴らしい造り手である、ピエモンテ州のカステッロ・ディ・ネイヴェ Castello di Neiveは、代々赤ワインだけを造ってきた生産者でした。しかし、現当主イタロ・ストゥピーノさんは、白ワインしか飲めない奥様を気遣い、奥様のためにと素晴らしい白ワインを造りました。それがランゲ・アルネイス“モンテベルトット” Langhe Arneis Montebertottoです。

バルバレスコの雄、カステッロ・ディ・ネイヴェ社が醸し出す秀逸な白ワインで、海抜290mに位置するモンテベルトットの畑で育まれたアルネイスから造られます。緑を帯びた麦わら色、軽快な心地よいフルーツ香りとエレガントな味わいが印象的なワインで、誕生した暁には、さぞかし奥様も喜ばれたことでしょう!

イタロ・ストゥピーノ氏とランゲ・アルネイス “モンテベルトット”
アントニオ・カスカラーノ氏と奥様のジネットさん

また、バジリカータ州のカメルレンゴ社の当主アントニオ・カスカラーノ氏は、大切な女性のために2つのワインを造りました。

ひとつは奥様の名前を冠した “ジネット・フリッザンテ Jinette Frizzante” 、瓶内二次発酵のスパークリングワインで、調和のとれたフレッシュでフルーティーなアロマ、フレッシュで非常に楽しい飲み心地のワインです。

そしてもうひとつは、昔の彼女の名前を冠した“ジュイエル Juiell”というアリアニコから造られるロゼ。標高300mの 「ヴィーニャ・トッポ・デュ・アヴッツォ」という畑の火山性土壌に植えられた樹齢10年~15年のブドウから造られています。鮮やかなコーラルピンク色。香りは、赤いベリー系の果実に、花やスパイスのニュアンスを加えた強いアロマ。フレッシュさとミネラル感のある圧倒的な味わいです。

このカメルレンゴ社で造られるワインは5つですが、その2つに奥様と元カノの名前を付けるというアントニオさん、きっと両方大恋愛だったのでしょうね。奥様の心境がちょっと気になるところですが・・・!

カメルレンゴ社について

また、世界最高峰のスパークリングワインの造り手としても確固たる地位を築く北イタリアはトレンティーノ・アルト・アディジェ州のフェッラーリ社は、創業当初からずっとシャルドネ一筋で、トレンティーノの山岳部で育つ高品質なシャルドネを使用して、瓶内二次発酵で造る“山のスパークリングワイン”がお家芸でした。しかし、そんなフェッラーリ社のワインが、美しいロゼ・カラーに色づく大きなきっかけがありました。

イタリアン・アルプスに囲まれた標高の高いフェッラーリ社の畑
マウロ・ルネッリ氏とフェッラーリ・ロゼ

それは1969年、当時の醸造家マウロ・ルネッリ氏が結婚する際のことです。自分の結婚式のために、何か特別なものを造って、愛する妻との門出を祝いたいと思ったマウロ氏は、同じくトレンティーノの山岳部に植えていたピノ・ネロを使って、初めてロゼ・スプマンテを造りました。いざ結婚式で、この120本のロゼ・スプマンテを120名のゲストに振舞ったところ、あっという間になくなってしまい、大評判であったことから、今までシャルドネ一筋だったフェッラーリ社が、ピノ・ネロを使ったロゼ・スプマンテも造ることになったのでした。現当主でマウロ氏の子どもである、カミッラ・ルネッリさん、アレッサンドロ・ルネッリさんにとっては、このフェッラーリ・ロゼは、両親の想い出と愛情が詰まった特別なワインなのだそうです!

さて、今日ご紹介するもうひとつの「愛のワイン」は、世界有数の白ワインの銘醸地として知られる北イタリアはフリウリ・ヴェネツィア・ジュ―リア州のコッラヴィーニ社が造るワインです。

コッラヴィーニ社の畑

コッラヴィーニ社は1896年、エウジェニオ・コッラヴィーニによって家族経営のワイナリーとして創業されました。

コッラヴィーニ社の故郷である、イタリアの最北東部に位置するフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は、イタリアの他の地域と比べると比較的小さな地域ですが、ワインの生産量ではイタリアトップクラスです。このエリアはアドリア海とジュリアン・アルプスの麓に位置し、北東に吹くボーラの風の影響を受け、寒暖差が激しく、湿度をもたらす海風を享受したミクロクリマがブドウの生育に非常に適しています。

ワイナリーはコッリオ地区とコッリ・オリエンターリ地区の真ん中に位置しており、コッリオ地区はスロヴェニアの国境に位置し、この地に特有の風“ボーラ”はブドウに新鮮さと高い酸をもたらします。また、土壌がワインにミネラルと塩味をもたらし、国際品種にとって好ましい条件に恵まれており、凝縮感があり、リッチでパワフルなワインが誕生します。

一方、コッリ・オリエンターリ地区は、北側はアルプス山脈に守られ、南側は穏やかな海風にさらされています。この地区で造られる主要品種はフリウラーノ、リボッラ・ジャッラ、レフォスコ・ダル・ペデュンコロ・ロッソ、スキオペッティーノ等があります。

コッラヴィーニ社は、この2つの異なる気候条件の両方を享受したユニークなエリアで、4世代に渡ってワイン造りを行っています。また、同州における最大にして最古のスパークリングワインの設備を備えたワイナリーでもあります。

それでは、このコッラヴィーニ社が造る「愛のワイン」をご紹介しましょう。

それは、「レフォスコ“プチノ”」です。土着品種のレフォスコ100%で造られるワインで、トロイ戦争の英雄ディオメーデの帰還を記念して造られたワイン”PUCINUM”(プチヌム)から名付けられました。

創業者エウジェニオ・コッラヴィーニの妻、マリアはこの赤ワインが大好きでした。そこでエウジェニオは、愛する妻への愛情表現として、マリアが大好きなこのワインを、1年で最もロマンティックな日、ヴァレンタインデーに瓶詰することに決めました。コッラヴィーニ社では、4世代目になった今でもこの伝統を大切にし、今でも毎年ヴァレンタインデーに瓶詰されています。

深いルビーレッド。ラズベリーやブラックベリーのフルーティーな香りと、力強いインパクトで微かな草の香りを感じさせるワインで、香り豊かで、しっかりしたタンニンと濃縮した果実味が、味わいの骨格を雄渾につくり上げています。

奥様が美味しそうに飲むこのワインに、さらなるロマンティックな付加価値を付けたエウジェニオ氏、ステキな方ですね!

エウジェニオとマリア・コッラヴィーニ夫妻とレフォスコ“プチノ”

さて、それぞれの生産者による、それぞれの理由から誕生した「愛のワイン」をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

今日は恋人や伴侶への「愛のワイン」をご紹介しましたが、土地への愛、母への愛、父への愛、愛犬への愛などなど、世界各国で様々な「愛」から、多種多様な素晴らしいワインが誕生しています。

皆さんも是非、ご自身のエピソードと共通点のあるワインを探して、オリジナルの「愛のワイン」を見つけてみるのはいかがでしょうか?

それでは、これからも愛し愛されながら、美味しいワインを楽しみましょう!

※本記事は2023年2月に執筆されたものです。