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ラツィオ ラツィオ

ラツィオ州

ラツィオも他の中部イタリアの州と同じでアペニン山脈と地中海に挟まれ、その間に広がる丘陵地帯を主なワイン産地としている。

ローマ郊外に広がるカステッリ・ロマーニと呼ばれる火山性土壌の丘陵地帯は日当たりもよく、葡萄栽培には適した土地である。古代ローマ以来のワイン造りの伝統もあり、テロワールに恵まれているのに、残念ながら個性を持った高品質ワインはあまり出てこない。「永遠の都」ローマの住民と観光客が大量にワインを消費してくれるので、努力をするインセンティヴが働きにくいのである。ただDOCフラスカーティーFrascati、DOCマリーノMarinoなどは、親しみやすく、幅広い食事に合い(ローマでは肉料理でも白ワインを飲む人が多い)、それなりに美味しいワインである。最近はいくつかの土着品種に注目して意欲的なワインを造り出している生産者もいる。ベッローネBelloneは酸がしっかりして、中部イタリアには珍しく、シャープな白ワインが生まれる。ティレニア海に浮かぶポンツァ島で造られるビアンコレッラBiancolellaを使った地中海的白ワインも素晴らしい。ただこれらの興味深い試みも単発的で、大きな流れにはなっていない。

 

眠れるラツィオの起爆剤になることが期待されるのがチェザネーゼだ。アペニン山脈の麓に広がる標高350-700mの石灰土壌丘陵地帯で栽培されるチェザネーゼからは赤い果実や胡椒のアロマを持つ、みずみずしく、スパイシーな赤ワインが生まれる。DOCGチェザネーゼ・デル・ピリオ Cesanese del Piglio、DOCチェザネーゼ・ディ・オレヴァノ・ロマーノ Cesanese di Olevano Romano、DOCチェザネーゼ・ディ・アッフィレ Cesanese di Affileの3つの呼称があり、地元ブドウ栽培家が明確な個性を持つワインを生み出している。ただPR能力が欠けているので、ワイン自体は素晴らしいものであるにもかかわらず、知名度が上がらず、幅広く配給されていないのは残念だ。

 

ラツィオ、特にローマの料理は世界中に知られ、愛されている。素朴な家庭料理で、はっきりとした味わいのものが多い。オリーヴオイル、ニンニク、唐辛子を多用する南イタリアを感じさせる料理だ。羊飼いの料理の影響も強く、塩辛いペコリーノ・ロマーノ・チーズもよく使われる。ユダヤ料理の影響も大きくアーティチョフをオイルで揚げたユダヤ風アーティチョフのカルチョーフィ・アッラ・ジュディア Carciofi alla giudiaは代表的前菜だ。生ハムやモッツァレッラを入れた小さめのお米のコロッケのスップリ・ディ・リーゾSuppli di risoはピッツェリアやバルでよく食べられている。卵入り手打ち麺よりもスパゲッティなどの乾麺が食べられることが多く、ペコリーノ・ロマーノと胡椒だけでスパゲッティを和えたシンプルな羊飼い料理のスパゲッティ・カーチョ・エ・ペーペSpaghetti cacio e pepe、その豪華版でパンチェッタ(またはグアンチャーレ)と卵が加わったスパゲッティ・アッラ・カルボナーラSpaghetti alla carbonara 、グアンチャーレ、トマト、トウガラシ、ペコリーノチーズのソースで和えたブカティーニ・アッラマトリチャーナBucatini all’amatricianaなどが有名だ。これらは家庭でも簡単につくれるメニューで、このシンプルさと明確な味わいはまさにローマらしい。メインディッシュの乳のみ仔羊の骨付きアバラ肉を焼いたアバッキオ・アッラ・スコッタディートAbbaccio alla scottaditoは手でつまんで食べる料理。牛のテールをトマトと煮込んだコーダ・アッラ・ヴァッチナーラCoda alla vaccinara、仔牛の胃袋のトマト煮込みトリッパ・アッラ・ロマーナTrippa alla romanaはローマの内臓料理の代表だ。

リコッタ・チーズもよく食されるが、それを使ったタルトのトルタ・ディ・リコッタ Torta di ricottaはデザートの定番である。

ペアリング

おすすめワイン

“フィロ” エスト・エスト・エスト・ディ・モンテフィアスコーネ

格付: エスト・エスト・エスト・ディ・モンテフィアスコーネ DOC

 

ユダヤ風アーティチョーク

シンプルながら、アーティチョークを花のように広げて素揚げにした前菜。素揚げだからこそ、ほんのり甘苦い野菜の滋味を感じつつも油脂の旨みがしみ込んで、塩で味わいを決めた美味しさが楽しめます。
素材の味を生かす為に、あえて過剰な果実分や華やかな香りを求めない。一方で揚げもの特有の油脂分をすっきりとさせ、食べ応えに調和できるストラクチャーが必要となる。
ワインにもわずかな苦みが残ることから、野菜の滋味を受け止めつつ厚みのある酸味で後味をすっきりさせてくれるでしょう。

 

トンナレッリ カーチョ・エ・ペペ

やや太めの弾力のある生パスタ”トンナレッリ”にペコリーノチーズと黒コショウだけで仕上げるシンプルなパスタ料理。
チーズのコクを十分に感じさせるパスタであるからこそ、コクを受け止める厚みのある酸味や程よいストラクチャーが必要となります。
裏側に感じる苦みを伴った果実味がチーズの塩味を旨みに感じさせ、黒コショウの香りやスパイス感にも寄り添っているのが楽しい。
余韻に持続するワインの酸味が、料理の重さを軽減させ次の一口を誘うのも魅力的です。

 

だし巻き卵

出汁の旨み、卵のコク、砂糖の甘味に程よい塩味が加わるシンプルながら奥の深い料理。そのシンプルさを生かすためにワインの過度な香りや果実味は控えたい。
ただし、卵のコクには程よいストラクチャーが必要であり、さらに砂糖の甘味を引き立たたせる塩味に対して厚みのあるワインの酸味は適している。
このワインが造られるラッツィオ州は卵料理が良く食べられることから鑑みてみても相性が良いと思われ、あまりワインを冷やしすぎなければ素材の旨みをより感じられるでしょう。

 

鶏レバーの甘辛煮

鮮度の高い鶏のレバーを生姜、醤油、みりんなどと共にゆっくりと柔らかに煮込んだ料理。
レバーの鉄分や砂糖、みりんのコクや旨みを重くさせないワインの酸味が心地よく、わずかに感じる熟成感が旨みとなって料理に重なっていきます。
過度な果実味もないことから純米酒のようなイメージで捉えられるでしょう。
このワインが造られるラッツィオ州は、内臓類のお肉を使った料理も伝統的に多く存在しており、レバーだけでなく心臓や砂肝を使った料理との相性も
試して頂きたいです。

 

ピータン豆腐

ピータンはアヒルの卵を灰や木炭や塩と一緒に粘土で包み、発酵させた中国の食品。そのピータンを豆腐の上にのせて好みによりザーサイやネギを添えることで酸味や苦み、香ばしさや油脂分が加わる。
豆腐の味を上回らいような、控えめな香りや果実味が良く、ストラクチャーも重すぎないほうが、豆腐やピータンの食感に寄り添うと思われる。またピータンのコクを受け止めつつ、ザーサイの苦みや酸味に同調するような味わいをトレビアーノの酸味にあるのも相性の良い理由になります。

 

ガパオライス

ホーリーバジルの香り、豚ひき肉の油脂分、パプリカの程よい苦みと卵のコクがペアリングのポイントとなるでしょう。好みで唐辛子の辛味を加える場合もありますが、この白ワインに合わせる場合は辛みは控えめな方が良いかと思います。
バジルの香りを引き立たせるには、ワインの香りは控えめな方がよく、肉の油脂をさっぱりとさせる酸味があることが好ましい。このワインは果実味も程よく野菜の苦みとの相性も良い。卵料理が多い地域のワインであるという地方性も考慮してペアリングを試して頂きたいです。

 

おすすめワイン

フラスカーティ

格付: フラスカーティ・スペリオーレDOC

 

プンタレッラのサラダ

チコリの仲間である「プンタレッラ」という野菜をアンチョビソースとともにサラダ仕立てにしたお料理。シャキシャキした食感に、独特の心地よい苦みとアンチョビの旨味や塩味が加わります。
まずはフレッシュな食感にあわせるような清涼感がワインに求められ、ワインもやや低めの温度で楽しみたいです。
次に野菜の苦みを打ち消すことなく、苦みを柔らかな味わいのアクセントとするような果実味がワインにあると好ましく、このワインが持つアロマティックな果実味はアンチョビの塩味に作用してより旨味を引き立ててくれるでしょう。

 

リガトーニ カルボナーラ

グアンチャーレと卵、ペコリーノチーズと黒胡椒をショートパスタのリガトーニに絡めたパスタ料理。
卵やチーズのコクがグアンチャーレの油脂分に加わり、後味に黒胡椒の辛みと香りが広がります。料理自体のストラクチャーが重いので、ワインはやや控えめのボディで食べ応えを軽くすることが出来ます。
ワインの酸味で肉の油脂分を軽やかにしつつアロマティックな香りは油脂分や卵のコクとも相性が良いです。しっかり冷やしてさっぱりと飲むのも良いですが、12℃程で飲むと果実味が出やすくチーズや油脂分の旨みを増幅していきます。

 

揚げ出し豆腐

豆腐を包む揚げの油脂分や香ばしさ、それに呼応するような豆腐の旨み。さらには好みで添えられる大根やネギの辛みと出汁の甘みに注目したい。
和食は文化的な個性として、味覚を足すよりも引く事を好としることから、料理によってはワインにも過度な香りや果実味は控えめな方が良いでしょう。もうひとつの要素として、みりんなどの甘みが加わる場合にワインにも程良い甘やかさを求めます。同様に薬味となるねぎや大根の辛みを程良い果実味が和らげ、豆腐の旨みに寄り添うようなペアリングが楽しめます。

 

秋刀魚の炭火焼

炭火焼きされた秋刀魚からはジューシーな油脂分が溢れ、脂の旨みに肝の苦みが加わることで深い味わいが感じられます。
一般的にはやや塩味を強めに焼かれる事が多く、大根おろしの辛みやしょうゆの旨みが加わることも考えられます。
料理にしっかりとした味わいがある事から、ワインのボディはやや控えめである事が望ましく、しっかりと冷やしてフレッシュ感や酸味を際立たせる事で、魚の鮮度を引き立てる事が出来ます。
ワインが持つアロマティックなニュアンスが、肝の苦みや大根の辛みを和らげつつ、しょうゆの旨みと調和することで素晴らしい相性を感じさせてくれます。

 

参鶏湯

丸鶏に高麗人参などの漢方、もち米やナツメ、にんにくなどを詰め込んだものを煮込む韓国料理。
家庭では丸鶏の代わりに手羽元を使う場合もあるでしょう。鶏肉自体やスープに融け出した油脂分の旨みに対して鮮度感のある酸味が口中を爽やかにしながら、人参や漢方の滋味深さにアロマティックな果実味が加わると、さらに香りと奥行きが層となって広がります。もち米のでんぷん質にもワインが持つ程良い果実味が調和する事で、余韻まで円やかな味わいが持続していきます。

 

海老の生春巻き

エスニック料理の代表格であり、茹でた海老の身をレモングラスなどの香草と共にライスペーパーで巻き、好みによってチリソースの辛みがアクセントとして加わります。
料理自体は軽やかなので、ワインのボディも控えめなものが好ましく、フレッシュ感に溢れた料理であることから爽やかな味わいが感じられることも重要です。
香草の香りに呼応する鮮度感、茹でる事によって生まれる海老の旨みを包み込むような穏やかな果実味はチリソースの甘酸っぱさにも良く合います。

 

ペアリング提案

第8回JETCUP優勝

永瀬 喜洋さん

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イタリアワイン格付(DOCG、DOC)一覧

エスト・エスト・エスト・ディ・モンテフィアスコーネ DOC

フラスカーティ・スペリオーレDOC