Cultureカルチャー

2026年4月8日

【JET CUP】チャンピオンツアー Vol.8

第16回 チャンピオン 山田 琢馬氏

イタリア研修 8日目 FERRARI ・Elena Walch訪問

イタリア研修 8日目 FERRARI ・Elena Walch訪問

 

フィレンツェを後にして向かったのはトレント。イタリアを代表するスパークリングワイン生産者、Ferrariの本社がある街だ。

 

FERRARI(フェッラーリ)

1902 年、北イタリア トレントでジュリオ・フェッラーリによって創業。イタリアで最初にメトド・クラッシコ製法に取り組んだパイオニアであり、トレンティーノの山々が育む、高品質なブドウで造られるフェッラーリのスプマンテは、イタリア産スパークリングワインで最も多くの賞を受賞している逸品として、世界中で称賛され続けています。イタリアでは政府の公式晩餐会では国賓にサービスされ、また国際的な舞台でもファッション、スポーツ、アート、シネマなど華やかな舞台の慶事の乾杯には欠かせない存在となっています。食前酒としてはもとより、食中酒として、前菜からメインまで、食事と寄り添えるような特別な配慮のもと醸造されています、また史上6 度目の「世界最優秀生産者賞」を受賞するなど、ますます世界的な舞台での活躍が目覚ましい、イタリア最高峰のスパークリングワインの生産者です。

 

ここはワイナリーとビジターセンターが一体となった施設で、広大な敷地の中にワイナリー、ワインショップ、イベントスペースが併設されている。その圧倒的なスケールは、これまで訪れてきたワイナリーとは一線を画すものだった。

 

 

まずはFerrariの歴史について簡単なお話を伺った。1902年創業のFerrariは、創業者ジュリオ・ フェッラーリ氏がブドウ栽培を学ぶためにモンペリエやアルザスを訪れた際、トレントとシャンパーニュの気候に類似性があることに気づいたことから、シャンパーニュ方式のスパークリングワイン造りを志したのが始まりだ。

 

 

1900年代初頭の北イタリアは戦火に巻き込まれていた時代でもあり、借金や後継者問題に直面したジュリオ氏は、多くの志願者の中から信頼のおけるルネッリ家にワイナリーを譲渡し、ルネッリ家の所有となって以降、資本面での後押しも受けながらFerrariは進化を続ける。イタリアを代表するプレステージ・スパークリングであるGiulio Ferrari Riserva del Fondatoreは1972年にファーストヴィンテージが誕生。

 

 

2代目エノロゴであるマウロ・ルネッリ氏が「さらに長い熟成は可能なの か?」と考え、一部のワインを意図的に残して熟成させたところ、驚くほど素晴らしい出来栄えとなったことから正式に生産が始まった。シャンパーニュにおけるプレステージ・キュヴェの始まりがDom Perig nonの1936年、続くが1945年であることを考えると、Giulio Ferrari Riserva del Fondatoreのリリースは世界的に見ても比較的早い。Ferrariが瓶内二次発酵による長期熟成のポテンシャルを早くから確信していたことがよく理解できる。

 

 

続いて、ワイナリー見学へ。年間約750万本を生産するだけあり、ワイナリーというよりも大規模 な工場のような印象を受けた。トレント全体のスパークリングワイン生産量が約1,200万本であることを考えると、Ferrari がいかに大きな存在として産地を牽引しているかが分かる。現在もなお敷地の拡張が進められているというから驚きだ。

 

 

トップ生産者ならではの圧巻の光景、パレットに無数に積み上げられたボトルは壮観だった。

 

 

ルミアージュは基本的にジャイロパレットで行われるが、マグナム以上のサイズは手作業で行われるとのことで、そのこだわりの強さを感じ、テイスティングでは思いがけないサプライズが待っていた。ルネッリ家3代目のマルチェッロ・ルネッリ氏によるRiserva Lunelliと、日本未輸入のPerlé Sboccatura Recentのウァーテイカルテイスティングが行われたのだ。さらに、Ferrariが経営するレストラン「ロカンダ・マルゴン」のシェフソムリエ、林基就氏の解説付きという、まさに贅沢な時間だった。

 

 

Perlé Sboccatura Recentは2000年以降に始まったプロジェクトで、もともとPerleとしてリリース予定だったワインを長期間澱とともに熟成させた、いわゆるレイト・デゴルジュマンである

 

 

今回はPerle 2019、Perlé Sboccatura Recent 2002、2003の3種類をテイスティング。ヴィンテージ由来の熟成感と長期澱接触が相まって、より複雑で旨味主体、構成要素の多さを明確に感じることができた。

特に印象的だったのは、2002年が大雨に見舞われた冷涼な年、対照的に2003年が非常に暑かった年であり、熟成の方向性がまったく異なっていた点だ。

デリケートなボディにオートリシスの香りが前面に出た多層的な2002年。エクスプレッシヴで丸みのあるテクスチャーが魅力の2003年。どちらもレイト・デゴルジュマンとして完成度が高く、洋食というよりは、キノコや味噌を使った和食と合わせてみたくなるスタイルだった。

 

 

Ferrariを後にして次に向かったのは、アルト・アディジェのトラミンに位置するElena Walchだ。日欧商事にとっても比較的最近取り扱いを開始した生産者ということもあり、今回の研修で特に訪問を楽しみにしていたワイナリーの一つである。

 

Elena Walch(エレナ・ヴァルヒ)

エレナ・ヴァルヒは、国際的に評価される家族経営のワイナリー。1980年代、建築家であったエレナがトラミンの名家に嫁ぎ、品質への強い信念をもとに革新を推進しました。カルダーロの「カステル・リングバーグ」とトラミンの「カステラーツ」という2つの単一畑に注力し、卓越したテロワールを表現。アルト・アディジェワインの品質を新たな次元へと引き上げました。歴史的セラーには大樽やバリック、最新設備が備わり、現在は娘たちと共に世界的評価を高め続けています。

 

 

Elena Walchは自社畑90ha、生産本数約80万本を誇り、アルト・アディジェの家族経営ワイナリーの中では比較的大規模な存在だ。ワイン造りの歴史は1810年、オーストリアからイタリアヘ移住したWalch家に遡る。

 

 

1980年代、当時建築の仕事をしていたエレナ氏がワイナリー建築の相談を現在の夫に持ちかけたことをきっかけにWalch家へ嫁ぐこととなる。当時、ワイン業界で活躍する女性は極めて少なく、エレナ氏は当時のアルト・アディジェで唯一の女性ワインメーカーとして、女性がワイン業界で活躍する先駆的な存在となった。到着後すぐに案内されたのはワインセラーだった。

 

 

元は修道院として使われていた建物で、随所に長い歴史を感じさせる一方、隅々まで手入れが行き届き、非常に清潔感のある印象を受けた。 今回のイタリア研修では、多くのワイナリーで形状の異なる大樽を目にしてきたが、Elena Walchの大樽は特に印象深い。

中でも1873年に購入されたという128hlの大樽は、フレンチオークとハンガリアンオークの混合材で造られ、現在も赤ワインの熟成に使用されている。80年ごとに木部の修復が行われているため経年劣化はほとんど感じられないが、購入当時から刻まれている側面の彫刻には、思わず背筋が伸びるような厳かさがあった。

 

 

樽熟成庫のさらに下層には、1982年以降のワインが無数に眠っており、地上から約6mの位置にあるセラーには、フラッグシップワインである“Beyond the Clouds “が約14,000本保管されているという。さらにその下階には熟成用のステンレスタンクが並び、国内では珍しいグラビ  ティフローを採用した設計となっている。

 

 

ワイナリーツアーの後は、彼らが手がけるほぼすべてのワインをテイスティングさせてもらった。アルト・アディジェのワインには「デリケートでありながら華やか」というポジティブなイメージを持っていたが、それに加え、Elena Walchのワインには明確なミネラルのアクセントがあり、 非常に立体的で芯のある印象を受けた。

 

 

数ある素晴らしいワインの中でも、特に印象に残ったのは以下の3本である。

 

• Chardonnay Riserva Vigna Castel Ringberg 2023

この度でテイスティングした中でもトップレベルのシャルドネだった。カルダーロに所有する単一畑「Vigna Castel Ringberg 」のシャルドネ100%。張りのある酸と、綺麗に溶け込んだフレンチオークの香ばしいタッチが見事で、世界と十分に渡り合えるシャルドネだと確信した。

 

• Beyond the Clouds 2017 & Beyond the Clouds 2015 “gent um bonum”

Elena Walchが手がけるトップ・キュヴェ。カルダーロ湖上部に位置する歴史ある単一畑、Vigna Castel RingbergとGewurtztraminer Vigna “Kastelaz”のシャルドネを主体に、複数の白ブドウ品種をブレンドし、樽発酵・樽熟成を施している。

 

 

“Argentum Bonum”

そのBeyond the Cloudsを標高2,000mに位置するシュネーベルク鉱山(Schneeberg ) でゆっくりと熟成させた未輸入ワインだ。摂氏11℃、湿度95%、さらに低気圧という特殊な環境下で、ワインは若々しさを保ったまま穏やかに熟成していく。2017年と2015年ではブレンド比率が異なり、シャルドネ以外の品種は明かされていないが、どちらも一貫してパンジェントな香り、滑らかな質感、そして余韻を引き締めるミネラル感が印象的だった。2015年は熟成の効果もあり、よりメローでハチミツのような発展的なニュアンスが感じられた。

 

これらのワインはいずれも、春から夏にかけて山の恵みが美味しく感じられる季節に、思わず合わせたくなる存在だ。アルト・アディジェのワインは、価格に対するパフォーマンスの高さに加え、繊細さと華やかさを兼ね備え、イタリアの他産地とは一線を画す個性を持っている。だからこそ、フレンチや中華、和食など、‘‘あえて”イタリア料理店以外に提案していくことで、より高い 評価と人気を得られると確信している。

 

改めて、この産地のポテンシャルを強く実感させてくれる、非常に貴重な経験となった。