main dish ハンガリー風牛肉の煮込み

ハンガリー風牛肉の煮込み

遊牧民の代表的料理 乾燥肉を戻したスープがルーツ

夫の仕事の都合で東京に移住したのは1967年のことでした。最初にできた友人はオーストリア人で、一緒に生け花や中華料理を習っていました。私より6年も前から日本に住んでいましたので、東京のどの店で何を買ったらよいかという情報を教えてもらうなど、彼女にはずいぶんとお世話になりました。

彼女は料理が大変上手だったので、お互いによくレシピを教え合っていました。この料理はその彼女が教えてくれたものです。

この料理はハンガリー語で「ギュリアス(gulyas)」と呼ばれ、「牛飼い」という意味です。この料理の起源は9世紀にまでさかのぼります。当時は遊牧民の代表的料理で、薄切りにした牛肉とたまねぎを煮汁がなくなるまでとろ火で煮たものを天日で干した後、革袋に詰めて保存していた保存食だったのです。夜の宿営地では、この乾燥させた肉を水で戻しいくつかの野菜を加えれば、スープになります。この時代にすでに、乾燥肉が存在ていたのには驚きです。

しかし、現在この料理に独特の風味を与えているパプリカは、19世紀に入ってから使われるようになったものです。パプリカとはハンガリー語で、辛味のない赤ピーマンの粉のことを指します。ピーマンはトルコによる占領時代にハンガリーにもたらされ、それ以降、ハンガリー料理のベース素材として残った野菜のようです。

こうして、この料理は経年とともに変化し、とくにオーストリアでは、赤ワインと小麦粉、サワークリームを加えラグー(煮込み料理)へと進化しました。

※このレシピは4人分ですが、この料理だけしか出さない場合は、2人でちょうどよい量です。私の場合、このスープを圧力鍋でつくりますので、30分ででき上がります(ただし、じゃがいもはでき上がりの10分前に加えるように)。

材料(4人分)

作り方

  • たまねぎはみじん切りにし、オリーブオイルを入れた鍋で5分炒めます。赤唐辛子は種を取りたまねぎに加えます。
  • シチュー用牛肉はさいの目(2、3cm)状に切り1に入れ、たまねぎとともに、きつね色になるまで炒めます。
  • つぶすか、みじん切りにして1分炒めたにんにくを2に入れ、塩で味付けをし、さらにパプリカの粉末、クミンを入れて約1分かき混ぜます。
  • チキンブイヨンまたは水と固形ブイヨンを3に加え、煮立たせたらふたをして、弱火で1時間半煮ます。
  • じゃがいもはさいの目に切り4に加え、さらに15分煮ます。

ミシェルアンドレコーヘン
Michele Andree Cohen

第二次世界大戦中の1939年12月、フランスのトゥールで生まれる。終戦後の1946年にトゥールからパリに移り、結婚するまでの15年間パリで暮らす。料理上手な母から、伝統的なフランス料理の他、アルザスの料理や、父親の故郷であるロレーヌ地方の料理を教わる。
バカロレア(大学入学資格)を取得後、PRの専門学校に入学。卒業後、企業PRに関わるレセプションに携わった。
1961年、エジプト出身のイタリア人と結婚。義母もまた料理上手で有名な人で、義母からイタリア料理や中東料理の手ほどきを受ける。その後5年間、商社に勤める夫の仕事の関係で、北アフリカのスーダンの首都ハルッームに住む。ここでシリア人、リベリア人、ギリシャ人、イタリア人など、さまざまな国の友人ができ、その友人たちからそれぞれの母国の料理を教わる。
1966年、イタリア・フィレンツェへ家族とともに移住し、その1年後、夫の赴任で日本へ。1992年に日本を離れるまで、日本でもまた、料理上手なイタリア人の友人たちやさまざまな国の友人と出会い、イタリア料理はもちろんのこと、日本料理、中華料理、インド料理など、幅広い料理の知識を得る機会に恵まれる。
友人たちのすすめで料理教室を開き、10年ほど、自宅で料理教室を主宰。料理をつくりながら語る、歴史やルーツなど、料理にまつわる「物語」が好評で、この経験が、日本を離れて18年たった今、料理本の出版を実現させることにつながった。
また、1980年ごろの日本ではまだほとんど知られていなかったティラミスを、日本に広めるきっかけをつくった功労者のひとりでもある。夫が日本に初めて輸入したフレッシュマスカルポーネチーズの販促活動をサポートするため、食品見本市でフレッシュマスカルポーネチーズを使ったティラミスの試食会を行い、これが評判を呼び、ティラミスが一気に全国的に知られることになる。フランスでレセプションの仕事をしていた経験がここで生きた結果となった。現在はスイス・ジュネーブで夫と2人で暮らしている。結婚し家庭を持った3人の子どもたちは日本、ドイツ、フランスで暮らしているが、年に2回は家族全員が集まる。家族に会い、料理を振る舞うことが何よりの楽しみ。マンマ(mamma)は今、8人の孫のノンナ(nonnaおばあちゃん)でもある。